犬の習性認めよう 2014.10.11
犬の祖先はオオカミだが、少なくとも1万数千年以上前から人と暮らすようになり、オオカミとは異なる動物に進化してきた。ただし今なおオオカミと似た特徴を持ち続けている点も多い。例をあげるとオオカミは群れを作り、集団で狩りをする。その名残は犬にも見られ、家族や仲間と一緒にいること(群れを作ること)や一緒に外出すること(集団で狩りをすること)が大好きだ。一般的に犬は留守番を好まず、どこでも飼い主と一緒に行きたがる。しかし日本では犬を連れて行ける場所はまだ多くはない。犬が拒否される理由のひとつはほえる、かむなどの問題行動だが、適切な教育を受けた犬であれば不快感を与えるどころか他の人まで楽しい気持ちにしてくれる。またきちんとトイレのしつけをしていても、人間の子供と同じで我慢できなくなることもある。他の犬の尿の上に尿をかけること(マーキング)は犬にとってはごく自然な行動であり、去勢手術で頻度を減らすことは出来ても完全になくすことは難しい。人間社会では受け入れられないため、犬の行動範囲を厳しく制限したり、外に連れ出すことをちゅうちょする飼い主も多い。しかしマナーウエア(マーキング専用オムツ)を着用すれば周囲の人に不快感を与えることなく外出を楽しめる。子犬の時期から積極的に外に連れ出すことで、無駄吠えや破壊行動などの問題行動も軽減するし、社会性も磨かれる。犬と飼い主が幸せに暮らすためには、犬が人とは違った習性を持っていることを認めること、そして適切な教育と工夫が必要だ
補食活動を日常の中に 2014.9.27
20日~26日は動物愛護週間。国や地方自治体、動物にかかわる団体が協力して、動物の愛護と管理の普及啓発のためのさまざまな行事を実施している。これらの行事でしばしば話題になるのはペットの正しい飼育方法やしつけについてである。犬や猫は野生動物とは異なり、家畜化された動物だ。人間社会に適応すべく進化してきた。我々は彼らをあたかも人のように扱う傾向があるが、人とは異なる種の動物であることに違いはない。彼らの生活環境は飼い主の都合によって決められるため、制約の多い人為的環境の中で、ある意味自分らしさを抑えつつ暮らしている。動物愛護法には「人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。」とある。ペットの習性を理解し、人間と協調しつつも、その動物らしさを失わずに生活できるよう工夫する必要がある。犬や猫という動物種の大きな特徴のひとつが捕食活動を行うという点である。そのためボールやおもちゃを追いかけたり、捕まえたりというような遊びを好むし、これが運動の機会ともなる。飼い主と楽しく遊ぶ経験なく育つと、食べることしか楽しみがなく、肥満になりやすい。健康上問題があるほど太らせるのは、ある意味虐待だ。フードを室内のいろいろな場所に隠したり、投げて取りに行かせる、知育玩具や穴の開いたペットボトルに入れて与えるなど食べることにも頭や体を使わせてほしい。人と動物の両方が快適に暮らせるように動物をもっと理解することから初めてみてはどうだろう。
迷子犬を救うチップ 2014.9.13
パピークラスに通っていた柴犬のさくらちゃんの飼い主さんが、見慣れぬ柴犬を連れて動物病院にやってきた。聞くと自宅マンションの近くで迷子になっていたらしい。犬は言葉がしゃべれないので、万が一飼い主と離れてしまうと二度と会えないということもある。動物管理センターに引き取られ、飼い主が見つからなければ処分される可能性もある。さっそくリーダーでチェックしたところ、この柴犬は幸運なことにマイクロチップを入れてもらっていた。おかげでその日のうちに飼い主に連絡が取れ、無事、飼い主のもとに帰ることができた。柴犬はリードに繋がれていたが、首輪が抜けて行方不明になったのだと言う。飼い主と再会できた時には、飛び跳ねてちぎれんばかりに尾を振り喜んでいたとのこと。マイクロチップは背中側の首の皮下に注射器のようなもので埋め込む個体識別の手段だ。直径2ミリ長さ8~12ミリ。データベースに登録されている個体情報のわかる15桁の数値を専用のリーダーで読み取る。リーダーは全国の動物保護センターや保健所、動物病院などに配備されている。一度埋め込めば生涯外れることがない。犬は狂犬病予防注射を接種して登録すると鑑札と注射済票が交付され、飼い主は犬にこれを付けておく義務がある。登録番号が記載されているので、飼い主を探すことが可能だ。ただし、これも取れてしまうことがある。やはりマイクロチップとの併用がお勧めだ。かかりつけの動物病院に相談してほしい。。
心の健康の知識、まず獣医師が 2014.8.30
ソウル市獣医師会に招かれ、韓国へ行った。韓国でも臨床行動学が注目されはじめている。臨床行動学とは飼い主とペットとの関係性を飼い主が望む姿に再構築し、そのプロセスを通じてストレスを軽減してペットの心理的健康を守ることを目指す学問であり、人の心療内科や精神神経科などに相当する。最も早く獣医界に導入されたのは米国だが、その理由は米国の犬の死因の第一位が安楽死であり、その最大の理由が問題行動であることが統計調査によって判明したからだ。日本でも問題行動は飼育放棄の原因として大きなウエートを占めており、韓国も同様の状況があると言う。獣医療は動物の身体的な健康を守ることに専念してきたが、心理的健康にも配慮すべきだと多くの獣医師が気づき始めた。殺処分数を減らすためにも獣医師が問題行動の予防に関する知識を持ち、飼い主に伝える必要がある。また飼い主とペットとの関係は上下関係ではなく、愛情や信頼関係によって成り立っていることも伝えるべきだ。しっかりとした絆で結ばれていればペットの病気や問題行動に直面しても一緒に乗り越える道を選ぶはずだ。研修所に集まったのは、ソウル市獣医師会の会長や副会長ら20人程の幹部だ。泊まり込みで3日間にわたり計20時間に及ぶ私の講義を熱心に聞いてくれた。そして彼らがそれぞれの地域へ情報を持ち帰り、会員獣医師に講義の内容を伝えるのだという。
犬の外出 夏場の注意 2014.8.16
犬は散歩はもちろん、飼い主の行くところならどこでもついて行きたがる。しかし夏場の外出は注意が必要だ。散歩は必ず早朝か、日没後に行ってほしい。犬は夏でも毛皮をまとっている上、足の裏以外は汗をかかないため、人よりもはるかに熱中症にかかりやすい。フレンチブルドッグなどの鼻の短い犬種や肥満気味の犬、また心臓病などの病気を持つ犬や高齢犬では特に注意が必要だ。この季節、晴れた日の昼間にアスファルトの上を歩かせるのはもってのほか、どうしても歩かさなければならない場合は日陰を選び、歩かせる前に必ず地面に手を触れて地面の温度を確認してほしい。人が手で触れて熱いと感じるのであれば歩かせるべきではない。犬は靴を履いていないし、体が低い位置にあるため地面の温度の影響を強く受ける。人が暑いと感じるなら犬はその何倍も暑いと感じているはずである。楽しいお出かけのつもりが、熱中症にかかり死に至ることもある。また、犬だけを車に残してはいけない。エンジンをかけていても万が一のために必ず誰か人がそばについておくべきだ。外出時は常に冷たい水を一緒に持ち歩き、こまめな水分補給をしてほしい。キャリーケースなどに入れるのであれば、中の温度にも気を配ってほしい。ペットボトルに水を入れて凍らせたものをタオルにくるんで入れておくと、キャリーケース内を涼しくするとともに、飲み水として与えることもできる。外出中、呼吸が荒く、体温が上がっている様子ならすぐに水をかけてうちわなどであおぐなどして体温を下げ、動物病院に受診してほしい。