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 2013年4月 〜 2015年4月     Vol.1

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子猫の幸せ願い  2013.6.8
 
先日、神戸市の動物管理センターから電話がかかってきた。子猫の引き取りの連絡だった。神戸市では昨年8月から猫の譲渡を開始したが、もみの木動物病院を団体譲渡先として登録していた。全国の行政で殺処分される猫は年間13万1136匹(2011年度環境省統計資料より)で、その多くが子猫だ。動物管理センターにも野良猫が出産ラッシュを迎える春先には生後間もない子猫が次々と持ちこまれ、ほとんどがその日のうちに灰になる。私はすぐに2匹の子猫を引き取った。生後2週間程度で、やっと目が開いたばかり。尿や便も自力ではできず、本来であれば母猫が授乳するだけでなく陰部をなめて刺激を与えてやる必要がある。当院では動物看護師や獣医師が母猫役を務める。仕事が終わると代わる代わる子猫を自宅に持ち帰り、夜間や早朝にもミルクを飲ませる。飲みの悪い子には口からカテーテルを胃まで入れてみミルクを与え、陰部を綿花で刺激して排せつを促す。便がでなければ今度は別のカテーテルを肛門から入れて微温湯で浣腸する。この時期は社会化期と言われ、猫をさまざまなものに慣らすのに適した時期だ。動物病院の入院舎で育った子猫たちは犬のほえ声や大きな物音に動じにくい。20人ほどのスタッフが代わる代わる世話するので、人への社会化もできる。こうして手塩にかけて育てた子猫たちはぜひ幸せになってほしいと思う。
子猫の里親を希望される方は当院(info@mominoki-world.net)まで。
 


すさんだ心も少しづつ  2013.5.25
 
前回に続き、我が家のもう一頭の預かり犬の話をしよう。10歳の雄の雑種で、東日本大震災の被災犬である。飼い主の自宅は福島県の警戒区域内にあり、彼を残して避難し、たまにしか戻って餌を与えられなかった。残された彼の心はささくれだってしまったのだろう。ある日ついに世話にやって来た飼い主をかんでしまった。その後も家族をかむようになり、飼育放棄となった。飼育放棄で行政機関に持ち込まれれば、1週間程度で殺処分となることが多い。人をかんだとなればなおさらだ。ところが当時被災動物は少なくとも1年間は殺処分しない方針で、幸運にも彼は麻布大学(神奈川県)の菊水健史教授らが実施する被災動物保護活動の対象に選ばれた。だが飼育担当者をかみ、大学では飼育できなくなってします。その後、日本動物病院福祉協会のハローアニマルネットを通じ、しつけインストラクターのもとで1年間のトレーニングを受けた。でも心の傷は思いのほか深く、改善はしたが、一般の人が飼育できるまでに至らなかった。いよいよ安楽死を選択せざるを得ない状況で、麻布大学の飼育担当者が待ったをかけ、問題行動の治療を兼ねて私の病院で預かることにした。薬物治療と専任スタッフによる心のケアを行うと、彼は少しずつ変わり始めた。体に触れられることを嫌って怒っていたが、逆になでてほしいと甘えるようになった、今、そんな彼を理解し、飼い主になってくれる人を探している。
 
 

 
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かみつき防止は乳歯期に  2013.5.11
 
我が家の6頭の犬のうち2頭は預かり中の犬である。1頭はもすすぐ6カ月になる雄の柴犬だ。飼い主をかむという問題行動の治療で、3週間前にやって来た。5カ月の柴犬の「かみ」は遊びとはいえ、かなりの強さ。家族は安心して触ることができないという。犬は本来、親兄弟と過ごす子犬期に仲間への過度のかみを自制することを学ぶ。ところが早期に親兄弟と離れて、飼い主宅に引き取られるとそのチャンスを失う。多くの飼い主は子犬期の甘噛みに悩まされる。この時期に対応を誤れば将来、「飼い主に手をかまれる」ことになる。成犬になると遊びでかむ頻度は減るが、本気でかまれれば被害は大きい。私はかんではいけないと教えるため、かんだとたんにその場からいなくなるなどの社会罰を使う。拙著「こころのワクチン」(パレード出版)にくわしく書いているので参考にしていただきたい。問題が深刻な場合には3週間のステイケア(入院治療)を行う。早いほど良いが、遅くとも生後4~5カ月ごろまでならば劇的に改善する。治療の一つに他の犬と遊ばせることがある。犬同士の触れ合いの中で、相手を傷つけずに遊ぶ方法を学ぶ。犬は生後5カ付きを超えると乳歯から永久歯に代わる。永久歯は骨を砕くほど破壊値からがあり、かみ抑制を学習していない椅子との触れ合いは安全性の意味でも困難となう。子犬が永久歯になる前(生後4、5カ月)にかみつきを自制する教育が必要であることを知っておいてほしい。
 

「猫らしさ」生む2匹飼い   2013.4.20


 
この春、娘が大学の獣医学部に入った。勧めたことは一度もなかったが両親と同じ道を選ぶことになった。うれしさ半分、心配も半分だ。その娘は我が家の猫4匹のうち2匹を連れて大学のある神奈川県で暮らし始めた。この2匹は兄弟で、生後6週齢で我が家に来た。兄弟で飼ったのは大正解だった。追いかけっこをしたり、なめ合ったりしながら仲良く成長した。猫同士の絆を結ぶのに最適なのは生後2~7週間の社会化期と呼ばれる時期である。この時期に親や兄弟とのふれあいを通じ猫後を学ぶ。社会化期に一緒に生活し始めれば多くの場合、仲良く暮らせる。猫は室内飼いが望ましいが、1匹だと他の猫と接する機会は全くない。その結果、飼い主に攻撃性を示すなどの問題行動も多い。猫が猫らしく生活するためには他の猫の存在は不可欠だ。私が子猫を兄弟で飼うことを勧めると、多くの人が「2匹も飼うのは大変だから」という。しかし2匹いることで飼い主をかむ頻度は激減するし、猫らしい行動ができる。動物がその動物らしい行動が出来ることは何よりも幸せだ。ただしすでに家にいる猫が成猫の場合は、新しい猫の導入は慎重さが必要だ。社会化期を過ぎれば過ぎるほど、猫は新しい猫を受け入れにくくなるからだ。子猫をこれから迎えようとしている人にはぜひ2匹で迎えることをお勧めしたい。高齢の先住猫がいても、子猫同士で遊んでくれるので、先住猫への負担が軽減される。

 

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いつも そばにいてくれた  2013.4.6
 
物心つく前から犬と暮らしていた。アルバムをめくると2歳ぐらいの私の横に見知らぬ茶色の雑種犬が写っている。保育園のころにはシェパードとスピッツが家にいた。友達より犬と遊ぶのが好きだった。いつの間にか保育園に行かなくなったが、家にはウサギやチャボ、ジュウ、カナリア、九官鳥、池にコイもいて、退屈することはなかった。一番の楽しみは父と一緒にマックという名のシェパードを近所の池に散歩に連れていく事だった。父の単車の後ろに乗るとシェパードは横について走った。池に着くと父は木切れを中央めがけて投げた。マックは、スイスイと泳いで持って帰って来た。40年以上も前のことである。私が小学生の時には母が胃がんになり、入退院を繰り返すようになった。猫との出会いは中2。道端で小学生がおもちゃにしていた子猫を連れ帰った。両親と1週間以内に里親を探す約束をしたが、いつの間にか家の子になった。母はこの猫を可愛がり、病院にもこっそりと連れていった。中3の時に母が亡くなり、高1の時に父は再婚した。私はうつ状態に近かった10代後半、猫に精神的に助けられた。動物は世話をする以上に多くのものを与えてくれる。その一方で人間に捨てられたり、虐待される不幸な動物もいる。「人と動物が仲良く暮らせばお互いにもっと幸せになる。」そう思った私はその手伝いをしたいと獣医師の仕事を選んだ。これから書いているコラムが動物を知り、より良い関係を築くきっかけとなれば幸いである。
 

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