『診察でご褒美をあげることで起きた変化』
那覇獣医科病院 獣医師 高良淳司


はじめに
沖縄県那覇市にある那覇獣医科病院では認定パピーケアスタッフとして高良さゆりさんが活躍されています。今回は同動物病院の獣医師 高良淳司先生より、認定パピーケアスタッフがいる病院で起こった変化などについてのご感想をいただきました。

当院は、那覇市のはずれ、元々は農村地帯であった地域が都市部のベッドタウンとして人口増加した、という環境にあります。
土地柄として、繋がれっぱなしで人との関わりの薄い犬が多く、当然診療は様々な恐怖からくる激しい反応と闘いながらのものでした。そこに都市化という変化が起こりましたので、今度はまた室内飼育の犬の恐怖心を鎮めながらという状況も多くなっています。
 
数年前にご褒美を食べてくれるのを待って診察を開始するという努力を始めてから、文字通り診察室に入るのを待ちきれないといった様子の犬が、徐々に増えてきました。中には散歩の途中に病院の入口前から動いてくれない、と戸惑った様子で立ちすくす飼い主さんと、期待に満ち溢れた眼をした犬の姿を見ることもあります。
 
4年前に院内でパピークラスが始まりました。パピーケアスタッフ養成講座を受ける同僚に必要なため始めたものですが、当初「資格を持たないものがクラスを開催しても、自信を持って指導できないだろうし、生徒さんも集まるものだろうか」という心配がありました。しかし、先生方には早く始めるように言われていることですし、ちょうどクラスを欲している飼い主さんとやんちゃそうな子犬もいます。怖がらずに始めてみることにしたのです。
 
実際にクラスを開催してみるとそこには、子犬の健康・食事管理の助言、しつけ方法の説明を沢山の引き出しの中から言葉を見つけ、適切に行う同僚の姿があります。また、職員同士の勉強会も、養成講座の宿題で作った資料を基に活発にされています。幸い、今では認定も取ることができ、さらにパピークラス『ちびわんくらぶ』の仲間を増やしつつあります。
 
クラスの卒業生は40頭程度ですが、その大部分は今でも喜んで診察に来てくれますし、飼い主さんもちょっとした疑問でも気軽に質問してくださいます。その様子がいい影響を与えているようで、同じ時間帯に来られた症例では、飼い主さんの恐怖心、猜疑心が乗り移ったような動物は少ない印象があります。
 
今でも多くの犬は恐怖、葛藤を押し殺した状態で診察室に入ってきますが、それが年齢のいった個体であっても諦めるわけではありません。何度か繰り返しご褒美を食べるように仕向けるとどうにか口にしてくれる犬もいますし、おもちゃを与えることで態度が柔らかくなる犬もいます。
 
診療中、喜んで診察室に入って来る犬が一頭でもいてくれると、凝り固まった首筋が柔らかくなるのを感じます。みなさまも、日々の安らぎにいかがですか。